トゥクマン州における家庭養鶏についての視聴覚教育の経験

ペルー、メキシコ、ホンデュラス、マリ、韓国、中国、ニカラグア、ブラジル、ボリビア、インド、パラグアイ、ドミニカ共和国における本手法を適用した能力育成の結果は、FAOの開発支援コミュニケーション部が作成した膨大な文書で確認することができる。

アルゼンチンの場合、この提案が実施されたのはごく最近のことである。まず1991年に、視聴覚教育の専門家がチリで養成された。そして1994年には、FAOと国家社会開発局のプロジェクト「Pro-Huerta」とINTA(国家農業技術機構)との協定の結果、農村部と都市部周辺部の家庭を対象に食糧自給についての能力育成をする為の広域普及用視聴覚教材がトゥクマンで提案された。この「Pro-Huertaプロジェクト」では、国家レベルで低所得層の食物摂取を向上させる為、「二重目的の鶏(卵と肉、両方の生産性が高い)」と呼ばれる品種の自家飼育の普及に着手することとなった。

このプロジェクトでは、能力育成と同時に、生まれたばかりの10羽の雛鳥(8羽の雌鶏、2羽の雄鶏)を支給することになった。そして、能力育成の量と質の向上の為、視聴覚教材パッケージの企画・製作がFAOに申請された。

当初の要望は、雛鳥が受け渡し直後に大量に死亡してしまう現象を回避する為の基本的な知識をプロジェクトの受益者に伝えることが出来るような教材の作成であった。

教材パッケージが扱う提案は、能力育成の対象者との間に緊密なコミュニケーションが存在する時にのみ、その利用価値が保証される。これは、能力育成の対象者にとって実際の利用価値があるということからだけでなく、将来の対象者を考慮して、様々な社会経済的及び文化的背景に適応させる時にも同じことが言える。

我々の場合、テーマは既に「養鶏」と決まっていたが、教材の製作ユニットは調査を行い、当初の提案が本当に効果的であるかを確認し、必要であれば部分的な修正を行う。

視聴覚教材の製作は、体系化された製作ステップを通じて、「正式ではない」伝統的知識と科学的知識の統合を試みる。つまり対話者(I)-メディア(M)-対話者(I)の代替コミュニケーション・モデルの理論的枠組みの中でいえば、まず初めにテーマ調査が行われて、教材パッケージ「家庭養鶏」の提案内容が決まるが、パッケージの有効性は、能力育成の対象者との繰り返しの対話の中で確証されてゆくことになる。

テーマの調査

  1. 1. 目的

a) 広範囲で多数存在する対象者の特徴を調べる。

b) 能力育成のニーズ調査を行い、視聴覚教材のテーマを調べる。

c) 問題の原因・結果の関係、関連するアクター、彼らの間の情報伝達経路を調べる。

d) 能力育成の目的を調べる。

e) 両方の対話者グループ(1.多数の対象者達、2.調査研究機関の専門家達)から得られた情報を統合しながら「共有する為の知恵」の基本的な提案内容を決める。評価の為の指標の候補を作る。

  1. 2. 調査の展開

アルゼンチンの「Pro-Huertaプロジェクト」は、トゥクマン州の低所得層家庭を対象として、自家養鶏促進の為の能力育成と雛鳥の供与を行うことになった。能力育成の量及び質的向上の為、広域普及用視聴覚教育法を採用して「家庭養鶏」についての視聴覚教材パッケージの製作を提起した。

製作ユニットは、主に対話と観察を行い、対象者達にとって能力育成のニーズがあるのかどうかを調査した。

アデレテス、サンタ・ルシア、タフィー・ビエホ、アマイチャ・デル・バージェ、およびその他のトルクマン州で、合計25家庭をサンプルにインタビュー調査を行った。その際、主に以下のポイントについて注意を払った。

a) マクロ経済、構造調整、失業などについての国家政策の方向性や、これらの政策のこの地域における影響度合いに関する情報

b) 自然地理学及び生態学から見た生息環境の確認。「Pro-Huertaプロジェクト」は、主に都市郊外において展開したが、NOAの農村地域に普及させる必要性もあった。一方で、農村部では常に自家消費は行われており、都市部の家庭にとって利用価値のある知識を提供してくれた。

特定の地域の特徴について詳細まで分析しすぎると、出来上がった教材パッケージの普及力が落ちてしまうという矛盾がある。これは、特定の対象者にしか見られない問題や、社会的、文化的、地理的な背景を掘り下げれば掘り下げるほど、他の地域では使えない教材パッケージとなってしまう。我々の場合、ローカルな特徴を盛り込むことで、NOA地域での教材使用には支障が出てしまわないように注意した。

c) 生産活動。プロジェクトの受益者の中には、養鶏の経験のある家庭とない家庭があった。一般的に、鶏舎や給餌器、卵を産む小屋、止まり木といった設備を備えている家庭はまれであった。一般的に、鶏の餌となるトウモロコシのコストの計算が出来る家庭は少なく、得られた生産物の流通も出来なかった。多くの場合、飼われている鶏は雑種であるが、それに加えてGallina de Rina、Catuchas、 Enanas、Chascas、その他の飾りとしてしか価値がないような品種を買っている。

d) 鶏の餌については、大多数の人がバランスの良い餌を与える必要性について無知であった。殆どの場合、その他の栄養補給を過小評価して、専らトウモロコシを与えていた。檻で飼われていない鶏の場合にはそれほど重要ではないが、教材が提案する鶏舎での飼育では、鶏は不足する栄養を補うことはできない。

e) 大多数の人々が、バランスの良い混合餌とは、何か秘密の材料を使用して作る魔法のようなもので、鶏を駄目にしてしまうと思っていた。その他の人々は、「養殖用」鶏の為の特別な餌だと思っていた。

f) 最終的に、対象者との対話を通じて、テレビ文化、教養レベルなどを知り、編集法、構成、言語コード、など我々のメッセージを伝えるのに有益な情報を得ることができた。

g) 社会経済的特長。健康、栄養摂取、住居、サービス、組織レベル、収入、土地の所有、移民、雇用など。

h) 栄養失調の問題は、明らかに複数の複雑な要因に起因しており、その殆どは、自家消費支援のプロジェクトでは改善が難しいものであった。

i) しかしながら、インタビューを行った家庭の中には、たんぱく質、炭水化物、ビタミン、塩分、鉄分を、多種類の食物からバランスよく摂取する大切さについて知らなかった。栄養不良は、単に栄養不足によるものだけではなく、バランスの悪い栄養摂取によるものである。

これらの調査によって、「共有の為の知恵」の決定の為にとても重要な2点が生まれた。

① 成人の場合、栄養のアンバランスは、調整栄養もしくはビタミン(野菜や果物)の不足、また肉やパスタのような炭水化物が豊富な食物の過剰摂取が原因であった。子供の場合は逆であった。更に子供の成長に欠かせないプロテインの欠乏が見られた。

② 家畜として鶏を飼育している家庭の多くが、生産されるものを十分に利用していなかった。多くの人は、卵からプロテインが補給できることを過小評価していた。「コレステロールが高いから」と言う理由で卵を消費せず、子供にも与えていなかった。インタビューを行った大半の人々にとっては、「コレステロール」という言葉は、絶対否定的な印象を持つ言葉であった。

肉の場合、味も良くタンパク質の摂取源としての価値が高いが、飼育している動物を殺すことに抵抗があり、実際に消費している人はごく少数であった。都市部での「ペット」の考え方を連想させる、鶏に対するこのような価値観は、サンタ・ルシアや、アマイチャ・デル・バージェのような農村部でも見られた。鶏の餌のトウモロコシに多くのお金を使っているのに、殺すのがいやだという感情の為だけで、せっかくの肉を消費しない家族の存在に、私たちは驚いた。

直感的に発見されたこの現象について、統計上有効かどうかを確かめる為、サンプル数を増やして更なる調査を進めた。そして、有効性が確認出来た後、教材の中の「共有の為の知恵」の内容を修正した。

言うまでもないことだが、住民を鶏の自家飼育について能力育成することが、彼らの栄養改善に結びつかないのであれば、能力育成する意味はない。

対象者との最初の対話によって得られた観察・分析の結果から、「Pro-Huertaプロジェクト」の技術者と共に、能力育成の目的を次のように決定した。「受益者(能力育成を受ける参加者)が、食料への支出が妥当な範囲でバランスのよい食生活を行えるように、動物性タンパク質の補給を目的とした鶏の自家飼育に取り組み始める、又は改善させることが出来るようになる。」

まずは上位目標と対象者を定めた後、本テーマの基本的なフレームワークを提案した。

このフレームワークは、提起された問題へ対する解決策の選択肢を基にして作られた。

視聴覚教育の専門家は、技術者や対象者との会話についていけるように、ベース調査を行い、小限の知識を獲得するに足るだけの基本文献に目を通した。

現場調査では、各家庭にインタビューを行った後、「Pro-Huertaプロジェクト」の技術者と共に、提案内容の技術的側面と支援介入の仕方について分析を行った。

技術者の助けと基本文献から得た知識によって、技術的な提案内容が適応時の実際の状況に合ったものになるよう調整を行った。この学術的調査では、国家レベルで知られる鳥の専門家にまで意見を求めた。

「Pro-Huertaプロジェクト」の技術者たちは、鶏というテーマに無知な視聴覚教育専門家が、先対象者の反応を先読みしながら提案内容を詳細に見直し、技術的側面について色々な質問をすることが出来るだけの柔軟性を持っていた。議論のテーマは、飼育用に推奨する鶏の品種であった。「ネグラインタ」は、ハイブリッド品種で卵をたくさん産むが、卵を温めるという本能を失っている為に、自らは卵を温めない。持続的な自家飼育を目指すとき、これは大きな問題であった。

この問題の解決策は、タフィー・ビエホのある家庭から得ることが出来た。そしてその後、技術者の合意を得て、教材パッケージの中で、技術的アドバイスとして加えることになった。つまり、最も優良な雌鳥を一羽選び、「母親代わりの孵卵器」として確保すればよいのだ。教材の中では、ネグラインタと中南米特有種が持つそれぞれの利点と不利な点を踏まえて、ネグラインタの生産性を十分に生かし、かつ中南米特有種の雌鳥の利点を回復することが出来る、いわばハイブリッドな解決策を説明した。

しかし、これらの内容を決定するのと同時に、ある水準と、高い複雑さで、更に基本的なほかの側面を脱神話化しなければならないことがわかった。雄鶏がいなければ、雌鳥が卵を産まないという迷信は一般的に知られている。そこから、鶏舎の経済的にかなり非効率な(餌をたくさん食べるが少ししか生産しないたくさんの雄鶏)の管理が生まれる。雌鳥の再生産の生理学は、この点を明確にするために、パッケージの中に取り入れられた。

これらは調査によりわかった事実のうちのいくつかであるが、これらによって、当初、雛鳥の死亡率を減少させるという目的のために提案された内容であったが、更に内容が豊富になった。

教育視聴覚の段階の最終的な成果物は、1講座15分程度で、グループワークを伴った6講座の教育パッケージ、参加者向けの教科書、そして能力育成者のためのガイドとなった。

教育視聴覚用パッケージという仮定を評価するために、事前評価の結果と、各能力育成の最後に行われた評価及びその後の観察を比較する。

a) 鶏の自家飼育の採用

b) 講座で扱った技術的提案の採用、品種、雄鶏の数、給餌器、水のみ場、止まり木など。

c) 死亡した雛の数

d) 卵、肉、肥料の統合的な利用

e) 講座に参加しなかった近隣家族のこの提案の採用、または能力育成や雌の雛鳥の苗床へのニーズ

雛鳥の死亡率の指標とともに、何が起こったかを分析する際、この指標により経験されたポジティブな変化はもっと明確である。しかしながら、統計的に処理するほど観察は十分ではない。

広範囲で適用したため、対象者との接触で、提案の内容を修正することが可能となった。パッケージを修正したあとでさえ、prohuerataの能力育成者たちは、バランスの良い栄養を構成する材料を見せるなどの実演や、持続的な経験から生まれた新しいグループワークを加え、改善を加えてきた。

鶏の自家飼育の教育用視聴覚パッケージは、1994年の11月より適用されてきた。トゥクマン州のPRO\HUERTAの「鶏の自家飼育」の能力育成の内部資料の詳細によれば、最初の6ヶ月でトゥクマン州の次の地域で35の能力育成を行っている。サン・パブロ、ブルヤク、タフィー・ビエホ、トランカス、アマイチャ・デル・バージェ、レアレス、ルレス、モンテロス、シモカ、コンセプシオン、リオ・チコ、アルベルディ、ラ・コチャ、アルデレテス、ファマイジャ

この35回の能力育成で、949人が能力育成された。そのうち63%が女性で、27%が男性、それから10%が子供と若者であった。方法論の適用の成果として、以前に推奨を行っていた21人の普及員と技術者が視聴覚を利用した能力育成のプロセスを運用し始めた。

最初に提案された特異性を上回り、教育パッケージはPro-Huertaのプロジェクトのコーディネーターたちに配布された。カタマルカ、サンティアゴ・デル・エステロ、サルタ、フフイ、フォルモサ、チャコ、コリエンテス、サンタ・フェ、サン・フアン、リオ・ネグロ、ブエノス・アイレス

教育パッケージ適用の副産物として、このコミュニケーションに付随する視聴覚による報告が作成された。

Traslated by Keita Ishitani

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